トラクターの盗難、キーを抜いていても止まらない。夜にトラックで積んでいく

「トラクターの盗難対策は、キーを抜くこと」。よく言われますし、そのとおりです。 ただ、埼玉県が2026年に出したチラシには、こう書かれています。「盗難被害にあったトラクタのほとんどが、エンジンキーを抜いた状態で保管していました」。 キーを抜くのは最低限です。それだけでは止まりません。この記事では、農機具の盗難がどこで、いつ、どう起きているのかを公表資料で整理し、倉庫や格納庫をどう守るかを書きます。

先に結論です

  • トラクターなど「特殊自動車」の盗難は、2025年に全国で179件でした
  • 盗まれた場所は、農地が26%。残りの74%は農地以外です。茨城県では、自宅の敷地内(倉庫・作業場を含む)が最も多いとされています
  • キーを抜いていても盗まれています。群馬県の2021年の24件のうち、15件はキーを抜いてありました
  • 多いのは3月から5月の春先です
  • 犯人は夜間にトラックで来て、積み込んで持っていくとみられています
  • キーに加えて、倉庫の施錠、物理的なロック、光と音とカメラを重ねることが大事です

全国で年間179件。キーが付いていたのは39%

農林水産省が、警察庁の協力を得てまとめたチラシの数字です。
  • 2025年の盗難件数:179件(「特殊自動車(その他)」の盗難認知件数)
  • 過去5年間で、盗まれた場所が農地だったのは26%(236件)。農地以外が74%(655件)
  • 過去5年間で、キーが付いていた(イグニッションに差したまま、または運転席の周りに置いていた)のは39%(346件)
  • 月別では、3月93件、4月99件、5月93件。春先が特に多くなっています
※この179件には、トラクターなどの農耕作業用自動車のほか、フォークリフトなども含まれます。農機だけの件数ではありません。 この数字から言えることは2つです。 1つめ。キーが付いていたのは4割弱です。裏を返せば、6割は、キーが付いていない状態で盗まれています。 2つめ。農地に置きっぱなしだったのは4分の1です。残りの4分の3は、農地以外、つまり倉庫や作業場、自宅の敷地などから盗まれています。

関東の各県では

県が公表している数字です。集計の仕方は県ごとに違うので、県どうしの比較はできません。
県件数出典・注記
茨城県2018年95件、2019年116件、2020年50件、2021年64件、2022年30件茨城県(トラクター等)。2025年は5月末までに6台(茨城県警)
栃木県2021年34件、2022年13件、2023年5件栃木県警察本部調べ(農業機械)
群馬県2016年6件、2017年9件、2018年12件、2019年7件、2020年18件、2021年24件県警への聞き取り。県は「統計数字ではありません」としています
埼玉県2025年4件埼玉県警察生活安全総務課調べ(乗用トラクタ)
件数だけを見ると、茨城県は2019年の116件から大きく減っています。ただ、トラクター1台の値段を考えれば、1件の被害は大きい。そして、減ったのは「キーを抜く」「農地に置かない」が広まった結果かもしれません。その次の手口に備える必要があります。

キーを抜いていても盗まれる

キーを抜いても盗まれる。埼玉県(2025年)はトラクター盗難4件のほとんどがキーを抜いた状態で保管していても被害に。群馬県(2021年)は24件のうち15件がキーを抜いていた。トラックで積んでいくため、キーを抜いたから安心はトラクターには通用しない

トラックで積んでいくなら、キーの有無は関係ありません。

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。
  • 埼玉県(2025年の4件):「盗難被害にあったトラクタのほとんどが、エンジンキーを抜いた状態で保管していました」
  • 群馬県(2021年の24件):キーが刺さったままだったのは9件。キーは抜いてあったのが15件
群馬県は、キーを抜いていても被害に遭っていること、そして畑だけでなく、ハウスや資材置き場の中からも盗まれていることを注意喚起しています。メーカーや機種による偏りもないそうです。 キーを抜くのは、もちろん大事です。ただそれは「キーの付いたトラクターから狙う」という犯人を避ける方法で、キーがなくても運び出せる犯人には効きません。

犯人は、トラックで来る

群馬県は、「夜間にトラックに積み込んで盗み出していると見られます」としています。 エンジンをかけて走って逃げるのではなく、トラックに積んで運ぶ。そうであれば、キーの有無は関係ありません。 古い事件ですが、2008年には茨城県警が、北関東5県でトラクターを中心に約700台を盗んでいたとされる7人のグループを摘発しています。報道によると、住宅と納屋が離れた農家を下見して狙い、県境で犯行を重ねていたとされます。目的は海外への転売でした。 夜に来る。下見をしてから来る。車で来る。太陽光発電所のケーブルを盗むグループ、果樹園や家畜を狙うグループと、動き方は同じです。

まず、お金をかけずにやること

農林水産省と各県が呼びかけている対策のうち、費用がほとんどかからないものです。
  • エンジンキーを抜き、自宅で保管する(農林水産省、茨城県警)
  • 農地やハウスに置いたまま帰らない。夜間は特に(農林水産省、群馬県)
  • 倉庫・納屋のシャッターや扉に鍵をかける。短時間離れるときも(農林水産省、群馬県、茨城県警)
  • シャッターの前や出入口に、トラックなどを置いて塞ぐ(埼玉県)
  • 車台番号と型番を控えておく。盗まれたときの届出に必要です(埼玉県、群馬県)
  • 夜間に農機をトラックへ積み込んでいる不審な人を見たら、通報する(群馬県)

物理的に動かしにくくする

次に、各県が勧めている器具です。
  • ハンドルロック、タイヤロック、車輪止め(茨城県、埼玉県、栃木県)
  • 隠しスイッチ(茨城県警)
  • エンジン始動にパスワードが必要な機能(茨城県。対応する機種の場合)
  • 警報装置(茨城県、埼玉県)
ここまでは、農機そのものに付ける対策です。最後に、農機を置いている場所を守ります。

倉庫・格納庫を、光と音とカメラで守る

茨城県警、埼玉県、群馬県、栃木県は、いずれも倉庫や格納庫へのセンサーライトと防犯カメラの設置を勧めています。株式会社White&Greenは、農機具を置く倉庫も含め、倉庫の防犯カメラ工事を数多く手がけてきました(施工実績はこちら)。太陽光発電所で組んでいる考え方を、格納庫にあてはめると、こうなります。

抑止は光と音

当社の実感として、犯行の抑止にいちばん効くのは光と音です。カメラは記録のための装置です。
  • センサーライト:シャッターの前と、トラックを横付けできる場所に向けます。積み込みには時間がかかります。その間ずっと照らされている状況を作ります
  • パトランプ・音声:センサーと連動させて、「警察に通報します」などの音声を流せます
太陽光発電所では、下見に来た窃盗団に対してセンサーが反応し、パトランプの音声に気づいた近隣住民が警察に通報して、被害ゼロで終わった現場があります。

住宅と格納庫が離れているなら

2008年の事件で狙われたのは、住宅と納屋が離れた農家でした。格納庫が母屋から見えない、音も届かない場所にあるなら、そこが一番の弱点です。
  • 格納庫で鳴った音が母屋に届かないなら、母屋でも鳴るようにする。格納庫のセンサーが反応したら、母屋でもサイレンが鳴る構成は組めます
  • 回線を引いて、スマートフォンで格納庫の映像を見られるようにする

カメラは、入口と格納庫を同時に

カメラで大事なのは、トラックが写るかどうかです。トラクターを積んで運ぶなら、トラックは敷地に入ってきて、格納庫の前に止まります。 そこで、敷地の入口から格納庫の方へカメラを向けます。こうすると、入ってくるトラックと格納庫の前を、同時に見ることができます。 カメラは、手の届かない高い位置に付けます。手の届く高さだと、下見の段階で外されたり、向きを変えられたりします。

録画はどのくらい残すか

春の作業が始まるまで、冬のあいだ格納庫を開けない農家もあると思います。目安として、カメラ4台・2TBのハードディスクなら、1か月程度は録画できます。長く使わない時期があるなら、そのぶん長く残せる構成にします。

カメラだけ、という選択もある

光と音まで組むのが理想ですが、パトランプを付けずに、カメラだけを設置することもできます。まずは記録を残す仕組みを入れて、必要に応じて光と音を足していく、という順番でも構いません。

費用の目安

電気が来ている倉庫で、出入口にカメラ・センサーライト・パトランプ(サイレン)を付ける構成なら、設置費用の目安は35万〜50万円程度です。カメラだけなら、費用はだいぶ下がります。どちらも、台数と、電源からの距離で変わります。最終的な金額は、現地を見てお出しします。

もっと費用を抑えたいなら、ソーラー式のSIMカメラ

電源や配線の工事を省きたい場合は、ソーラーパネルで動き、携帯電話の回線(SIM)で映像を送るカメラという選択肢もあります。電源工事が要らないので、費用を安くできる可能性があります。電気の来ていない畑や、母屋から離れた小屋にも付けられます。 ただし、次の点は知っておいてください。
  • パトランプとは連動できません。光と音で追い返すことはできず、記録とスマートフォンでの確認が中心になります
  • 通信料が毎月かかります。通信量の上限もあります
光と音まで組むか、カメラだけにするか、ソーラー式のSIMカメラにするか。どれが合うかは、守りたい場所と、近くに人の耳があるかどうかで変わります。

盗まれたときのために

  • 車台番号と型番を控えておく(届出に必要です)
  • 農機具共済や収入保険に入っておく(栃木県、埼玉県が勧めています)
  • 被害に遭ったら、警察、共済、農協、販売店に連絡する(埼玉県)

ご相談はこちら

農機具の倉庫・格納庫の防犯カメラ設置は、まずはご相談ください。現地を調査したうえで、お見積りをお出しします。 あらかじめ金額を出していないのは、格納庫の場所と電源、母屋までの距離で費用が大きく変わるからです。「◯台でいくら」と先に出しておいて後から追加、ということにしたくありません。現地を見たうえで、根拠のある金額をお出しします。 なお、遠隔地の場合は現地調査費用をいただくことがあります。費用の目安は、交通費と人件費です。お問い合わせの際に所在地をお知らせいただければ、調査費用が発生するかどうかを先にお伝えします。 株式会社White&Green
東京都千代田区神田佐久間町3-37-1-203
TEL:03-5809-3116(営業時間 10:00〜18:00)
対応エリア:東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬 お問い合せフォームはこちら

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よくあるご質問

トラクターの盗難は全国で何件起きていますか?

農林水産省によると、2025年のトラクターなど特殊自動車の盗難は全国で179件です。この件数にはフォークリフトなども含まれます。過去5年間では、3月93件、4月99件、5月93件と春先に多くなっています。

キーを抜いておけば盗まれませんか?

キーを抜いていても盗まれています。埼玉県は、2025年に盗まれたトラクタのほとんどがエンジンキーを抜いた状態で保管されていたとしています。群馬県でも、2021年の24件のうち15件はキーが抜いてありました。夜間にトラックに積み込んで運び出していると見られており、キーの有無に関係なく持ち去られます。

トラクターはどこで盗まれることが多いですか?

農林水産省の過去5年間の分析では、農地で盗まれたのは26%で、74%は農地以外です。茨城県は、自宅の敷地内(倉庫や作業場を含む)での被害が最も多いとしています。群馬県も、畑だけでなくハウスや資材置き場の中から盗まれていると注意を呼びかけています。

お金をかけずにできる対策はありますか?

エンジンキーを抜いて自宅で保管すること、農地やハウスに置いたまま帰らないこと、倉庫のシャッターや扉に鍵をかけること、シャッターの前にトラックなどを置いて塞ぐこと、車台番号と型番を控えておくことです。農林水産省や各県が呼びかけています。

倉庫に防犯カメラを付けるなら、どこを撮ればいいですか?

倉庫の出入口と、トラックが止まる場所の両方です。敷地の入口から格納庫の方へカメラを向ければ、入ってくるトラックと格納庫の前を同時に見られます。抑止にはセンサーライトやパトランプの光と音を組み合わせ、カメラは手の届かない高い位置に付けます。

格納庫の防犯カメラの費用はいくらですか?

電気が来ている倉庫で、出入口にカメラ・センサーライト・パトランプを付ける構成なら、設置費用の目安は35万〜50万円程度です。カメラだけの設置なら、費用はだいぶ下がります。どちらも台数と電源からの距離で変わるため、最終的な金額は現地調査のうえでお出しします。

格納庫が母屋から離れていても、異常に気づけますか?

気づけるように組めます。格納庫のセンサーが反応したら母屋でもサイレンが鳴る構成にできます。回線を引けば、スマートフォンで格納庫の映像を見ることもできます。パトランプを付けず、カメラだけを設置することも可能です。

盗まれたときに備えて何をしておけばいいですか?

車台番号と型番を控えておくこと、農機具共済や収入保険に加入しておくことです。被害に遭ったら、警察、共済、農協、販売店に連絡してください。

電気の来ていない場所にも防犯カメラは付けられますか?

付けられます。ソーラーパネルで動き、携帯電話の回線(SIM)で映像を送るカメラなら、電源工事が要らないため、費用を安くできる可能性があります。ただしパトランプとは連動できず、通信料が毎月かかります。

この記事の出典