農家の倉庫の出入口に、カメラ・センサーライト・サイレンを付けると、費用の目安は35万〜50万円です。
梨を5,000個盗まれる果樹園なら、1回の被害を止めれば取り返せる金額です。でも、小さな畑を何枚か作っている農家にとっては、1年分の利益が飛んでしまう金額です。「必要なのは分かるけど、出せない」。そう思う方のほうが多いと思います。
この記事は、そういう小規模農家の方に向けて書きます。答えは、1軒で抱えないことです。
先に結論です
- 何軒かの農家でまとめて、農道や集落の入口にカメラを付ける。町内会で防犯カメラを付けるのと同じ形です
- まずは、サイレンなしの、カメラだけ。費用を抑えて、記録を残すところから始めます
- 町内会・自治会として付ければ、補助金が出る可能性があります。関東の約3分の1の市区町村に、自治会向けの防犯カメラ補助があります。補助率は2分の1〜10分の9、1台20万〜30万円のところが多いです
- ただし補助の条件は、道路などの公共空間を撮るカメラであること。畑そのものではなく、車が通る道を撮ります
- お金をかけない対策(施錠、収穫物を置かない、ステッカー)は、すぐに全部やる
1軒で、全部を守ろうとしない
畑の防犯は、1軒でやろうとすると、どうしても高くつきます。
- 畑は広い。果樹園でも、関東の主な梨産地では1軒あたり平均約1ha(100m四方)あります
- 電気が来ていない畑が多い。電気を引き込む工事が要ることもあります
- 自宅から離れた畑なら、映像を見るためのネット回線も要ります
でも、盗む側の動きを考えると、別の守り方が見えてきます。
キャベツ1,200個も、梨5,000個も、車がないと運べません。そして車は、決まった道を通ります。
一軒一軒の畑を守るのではなく、
その地域の畑に入るための道を、みんなで押さえる。これが、小規模農家にとって現実的な守り方です。
何軒かでまとめる。町内会でカメラを付けるのと同じ形
住宅地では、町内会や自治会が、通学路や集落の入口に防犯カメラを付けています。費用は町内会で出し合い、市町村の補助を使い、映像は決まった人だけが見られるようにして、何かあったときに警察に提供します。
農家も、同じ形でできます。
- どこに:農道の入口、集落に入る道、何軒かの畑に共通する出入口
- 何を撮るか:道を通る車と人。夜に入ってくる車が、何時に、どちらから来たかが記録に残ります
- 誰が付けるか:何軒かの農家、生産部会、または町内会・自治会として
1台のカメラを、何軒かで分け合うことになります。1軒あたりの負担は、1軒で付けるよりずっと小さくなります。
カメラは、普通に配線して付けられます。ソーラー式のカメラもありますが、配線できる場所なら、
ソーラー式でないほうがいいというのが当社の考えです。電気がまったく来ていない長い農道の場合は、
農道を守ろうに書いたように、ソーラー式が割安になります。
まずは、サイレンなしのカメラだけ
当社が小規模農家の方に提案するなら、
サイレンを付けずに、カメラだけから始める形です。
当社は、盗まれるのを止めるのは「その場の光と音」だと考えています。ただ、何軒かで費用を分け合い、まず地域として記録を残す仕組みを作るなら、カメラだけの構成が現実的です。費用もだいぶ下がります。
カメラだけでも、できることはあります。
- 記録が残る:何時に、どんな車が入ってきたか。被害に遭ったとき、警察に提供できます。検挙率が43.4%しかない農作物の盗難で、手がかりがあるかないかは大きな違いです
- 「見られている」と伝わる:「防犯カメラ作動中」の看板やステッカーと組み合わせると、下見に来た相手に、ここは記録されていると伝わります。農林水産省の資料には、いちごハウスでカメラとステッカーを付けたあと盗難が起きていない、という事例が載っています
その場で警告したい畑(被害が大きい作物、何度も狙われている畑)には、あとから光と音を足すこともできます。
町内会・自治会として付ければ、補助金が出る
農家向けの防犯カメラの補助は、関東ではほとんどありません。当社が関東7都県の全316市区町村を調べたところ、農業の防犯にはっきり使える制度は数か所だけで、上限も2万〜5万円でした。
ところが、
自治会・町内会向けの防犯カメラ補助は、関東の
約100の市区町村にあります。
| 都県 | 自治会向けの補助がある市区町村(目安) | 例 |
| 茨城 | 約15/44 | 土浦市:2分の1・1台20万円 |
| 栃木 | 約9/25 | 宇都宮市:3分の2・上限22万円 |
| 群馬 | 約6/35 | 館林市:4分の3・1台30万円 |
| 千葉 | 約21/54 | 千葉市:4分の3・新規1台30万円 |
| 埼玉 | 約14/63 | さいたま市:4分の3・1台25万円 |
| 東京 | 約27/62 | 区部は補助率が10分の9以上の区も多い |
| 神奈川 | 約12/33 | 横浜市:10分の9・1台28万円 |
※当社の調査の記録から数えた目安です。制度は年度ごとに変わります。
自分の市区町村に自治会向けの補助があるかは、県別のページの一覧表で探せます:
茨城県・
栃木県・
群馬県・
千葉県・
埼玉県・
東京都・
神奈川県。
ただし、条件があります
- 申請するのは自治会・町内会です。農家個人では申請できません
- 道路などの公共空間を撮ること。撮影範囲の半分以上が道路、という市町村も多くあります。個人の財産(倉庫や畑そのもの)を守るためのカメラは対象外、と書いている市町村もあります
- 映像の管理のルール(誰が見られるか、何日残すか、警察への提供の手順)を、自治会として決める必要があります
- 多くは前の年度に事前協議が必要です。思い立ってすぐには付けられません
- 交付決定の前に発注・着工すると、対象外になります
だからこそ、「農道や集落の入口の
道路を撮るカメラ」として計画するのがポイントです。畑を撮るのではなく、畑に入る車が通る道を撮る。これなら、補助の目的(地域の安全)と、農家の目的(盗難対策)が重なります。
進め方
- 近所の農家と、町内会・自治会に声をかける。同じ道を使う農家が何軒あるか、被害が出ているかを話し合います
- カメラの場所を決める。農道の入口、集落に入る道など、車が必ず通る場所です
- 市区町村の補助を確認する。自治会向けの補助があるか、条件(撮影範囲、事前協議の時期)は何かを、市区町村の担当窓口に聞きます
- 見積りを取る。補助の要件に合う機器と構成で、申請に使える形の見積りを出してもらいます
- 運用のルールを決める。電気やネット回線の契約を誰の名義にするか、映像を誰が見られるか、何日残すか
- 申請して、交付決定を受けてから工事。
お金をかけない対策は、今日からできる
カメラの話が進むまでのあいだも、次のことはすぐにできます。
- 収穫したものを、畑やハウスに置いて帰らない
- 倉庫やハウスは、必ず施錠する
- 「防犯カメラ作動中」「盗難防止警戒中」のステッカーや看板を、道から見える位置に出す
- 作業する人には腕章、車にはステッカー。見慣れない人や車が目立つようにする
- 地域のパトロールに参加する。栃木県真岡市の「いちご守り隊」のように、警察・市・JAと合同で見回る地域もあります
ご相談はこちら
何軒かの農家や町内会でまとめて付けるカメラのご相談も、お受けします。補助金を使う場合は、要件に合う構成と、申請に使える形の見積りをお出しします。
なお、
遠隔地の場合は現地調査費用をいただくことがあります。費用の目安は、交通費と人件費です。お問い合わせの際に所在地をお知らせいただければ、調査費用が発生するかどうかを先にお伝えします。
株式会社White&Green
東京都千代田区神田佐久間町3-37-1-203
TEL:03-5809-3116(営業時間 10:00〜18:00)
対応エリア:東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬
お問い合せフォームはこちら
農業の防犯の記事
農業の防犯カメラ補助金(県別・全市町村とJAを調査):茨城県・
栃木県・
群馬県・
千葉県・
埼玉県・
東京都・
神奈川県
よくあるご質問
小規模農家でも、防犯カメラを付けられますか?
1軒で付けると、カメラ・センサーライト・サイレンの構成で35万〜50万円程度かかり、小規模農家には重い負担です。何軒かの農家でまとめて、農道や集落の入口にカメラを付け、費用を分け合う方法があります。町内会で防犯カメラを付けるのと同じ形です。まずはサイレンなしの、カメラだけから始めると費用を抑えられます。
何軒かでまとめて付ける場合、補助金は出ますか?
町内会・自治会として付ければ、自治会向けの防犯カメラ補助が使える可能性があります。関東では約100の市区町村にあり、補助率は2分の1〜10分の9、1台20万〜30万円のところが多いです。ただし申請は自治会・町内会が行い、道路などの公共空間を撮るカメラであることが条件です。多くは前の年度の事前協議が必要です。
畑を撮るカメラでも、自治会の補助は使えますか?
畑そのものを撮るカメラは、対象外になる可能性が高いです。自治会向けの補助は地域の安全のための制度で、道路などの公共空間を撮ることが条件になっています。農道や集落の入口の道路を撮り、そこを通る車を記録するカメラとして計画するのがポイントです。
カメラだけで、盗難は防げますか?
カメラだけでは、その場で侵入者を追い返すことはできません。ただし、何時にどんな車が入ってきたかの記録が残り、被害に遭ったときに警察に提供できます。「防犯カメラ作動中」のステッカーや看板と組み合わせると、ここは記録されていると伝わります。被害の大きい畑には、あとから光と音を足すこともできます。
お金をかけずにできる対策はありますか?
収穫物を畑やハウスに置いて帰らないこと、倉庫やハウスを必ず施錠すること、「防犯カメラ作動中」などのステッカーや看板を道から見える位置に出すこと、作業者や車に目印を付けること、地域のパトロールに参加することです。
この記事の出典
- 自治会・町内会向けの防犯カメラ補助の数と内容:関東7都県・全316市区町村の公式サイトを株式会社White&Greenが2026年10月に調べた結果(各県のページに公式ページへのリンクを掲載)
- 果樹園の1軒あたりの面積:農林水産省「2020年農林業センサス」をもとに計算
- 検挙率43.4%(令和6年):警察庁「財産犯被害額・回復額及び被害品別認知・検挙件数」
- いちごハウスでカメラとステッカーを付けたあとの事例、対策:農林水産省「農作物の盗難の実態と対応策」(PDF)
- いちご守り隊:栃木県 芳賀農業振興事務所
- 設置費用の目安:株式会社White&Greenの施工・見積りの実務にもとづく内容です