家畜の盗難と畜舎の防犯。2020年、北関東で豚約680頭。畜舎のカメラは、防犯だけのものではない

2020年の夏、北関東で家畜が次々に盗まれました。群馬県の養豚場では、子豚が一度に約400頭。栃木県足利市の牛舎では、子牛を逆さに抱えた男3人が、防犯カメラに映っていました。 畜舎の防犯は、作物や農機とは少し事情が違います。盗まれるのは生き物で、侵入されること自体が病気の持ち込みにつながるからです。 この記事では、2020年に何が起きたのかを公表資料で整理し、畜舎で何をどう付けるのが現実的かを書きます。最後に、畜舎のカメラは防犯だけでなく、分娩の見守りにも使えるという話をします。

先に結論です

  • 2020年、北関東を中心に、豚・牛・鶏・山羊の盗難が相次ぎました。豚は約680頭にのぼります
  • 犯行は夜間。昼間に下見をして、畜舎の近くに車をつけていました
  • 防犯カメラには犯人が映っていました。それでも盗まれています。カメラは記録で、追い返すのは光と音です
  • 農林水産省は、盗難が家畜の病気の侵入につながるおそれがあると明記しています
  • 畜舎のカメラは、分娩の見守りにも使えます。防犯用のカメラで分娩監視の手間を減らした県の検証があります

2020年、北関東で何が起きたか

農林水産省は2020年8月31日、全国に向けて通知を出しました。書き出しは「6月頃から栃木県、群馬県等において、子牛や豚の窃盗事件が発生」です。 長野県の家畜衛生情報(2020年9月7日)が、関東の県ごとの被害をまとめています。
県件数主な被害
群馬県9件前橋市で豚5件・計580頭(7〜8月)、伊勢崎市・太田市で豚2件・計110頭(8月)、館林市・邑楽町で牛2件・各1頭(5〜6月)
栃木県4件足利市の同じ農家で黒毛和種の子牛が6月に2頭、8月に3頭。ほかに交雑種の子牛1頭、山羊3頭
茨城県2件常総市で豚1頭(7月)、水戸市の直売所脇で山羊1頭と鶏など9羽(8月)
埼玉県1件本庄市で豚2頭(5月)
このあと9月10日には、埼玉県行田市の養豚場でも子豚が盗まれています。 報道によると、7月上旬から8月28日までに、栃木・群馬・茨城で豚約680頭、子牛8頭、鶏28羽が被害に遭いました。前橋市の養豚場では、一度に約400頭です。狙われたのは主に生後2〜4か月の子豚でした。

同じ農家が、繰り返し狙われた

足利市では、同じ農家が6月と8月の2回被害に遭っています。報道では、足利市の2つの牧場で、6月から8月にかけて3回、計6頭の子牛が盗まれたとされています。 一度入れた場所には、また来る。太陽光発電所の盗難でも、果樹園の盗難でも、同じことが起きています。

カメラは、映していた

8月22日の深夜、足利市の牛舎で、男3人が子牛を逆さにして運び出し、ワゴン車で走り去る様子を防犯カメラが撮影していました。 カメラは、きちんと仕事をしていました。それでも、子牛は盗まれています。 これは、カメラが役に立たないという話ではありません。カメラの仕事は記録であって、その場で追い返すことではない、ということです。株式会社White&Greenが太陽光発電所で、カメラだけでなく光と音を組み合わせているのは、このためです。

その後、どうなったか

この件に関連して、2020年10月以降に逮捕者が出ています。ただし報じられた容疑は、入管難民法違反や、と畜場法違反(無許可で豚を解体した疑い)などでした。家畜の窃盗そのもので起訴されたという情報は、当社が調べた範囲では見つかりませんでした。 また、2021年以降、関東で同じ規模の家畜盗難が起きたという報道や公表資料も、当社が調べた範囲では見つかっていません。2020年が最大の波だったと考えられます。 ただ、「あれ以来起きていないから大丈夫」とは言い切れません。2020年の犯行は、昼間に下見をして、夜に車で来て、子豚を数百頭単位で運び出すという、準備された犯行でした。条件がそろえば、また起きうる手口です。

犯人は、どう動いていたか

群馬県畜産課と群馬県警察が、畜産農家向けのチラシで犯行の傾向をまとめています。
  • 犯行は夜間
  • 昼間に下見をしている
  • 畜舎の近くに車をつけて運び出している
  • 凶器を持っている可能性がある
茨城県警察も、トラックなどの大きめの車両を見たら、すぐに110番するよう呼びかけていました。数百頭の子豚は、車がなければ運べません。 夜に来る。下見をしてから来る。車で来る。これは、太陽光発電所のケーブルを盗むグループとまったく同じ動き方です。

盗難は、病気の入り口でもある

畜舎の防犯が、ほかの農業の防犯と違うのはここです。 農林水産省の通知は、家畜の盗難について、経済的な損失だけでなく「家畜疾病の農場内への侵入及びまん延につながるおそれ」があると書いています。群馬県のチラシの見出しも「農場への不審者の侵入を防ぎ、家畜・家きんを伝染病から守りましょう!」です。 2020年は、豚熱(CSF)が各地で発生していた時期でもあります。消毒もせずに畜舎に入り、豚を抱えて出ていく人がいる。それ自体が、農場にとっての大きなリスクです。 家畜伝染病予防法にもとづく飼養衛生管理基準では、衛生管理区域に立ち入った人の記録や、関係のない人を立ち入らせないための看板の設置が求められています。「誰が入ったか分からない」状態を作らないことは、防犯と防疫の両方に効きます。

農林水産省と各県が勧めている対策

農林水産省が、警察庁の協力を得て整理した防犯のポイントです。長野県・山梨県・埼玉県・岐阜県も、ほぼ同じ内容を呼びかけています。
  1. 飼っている頭数を、こまめに確認する
  2. 出入口・畜舎・飼料庫・機械倉庫に鍵をかける
  3. 機材を整理整頓する
  4. ネットや柵を設置する
  5. 「盗難防止警戒中」「立入禁止」「防犯カメラ作動中」の看板やのぼり旗を出す
  6. 防犯カメラとセンサーライトを設置する
  7. 不審な人や車、被害は警察に通報する
  8. 石灰散布などで消毒する
群馬県は、このほかに人感センサーライトと防犯カメラを「多数」設置することと、畜舎への車の横付けを防ぐことを挙げています。茨城県警察は、センサー式の警報器を勧めていました。 1番目の「頭数の確認」は大事です。子豚が数頭減っていても、毎日数えていなければ気づけません。気づくのが遅れれば、それだけ手がかりが消えます。

畜舎で、何をどう付けるか

株式会社White&Greenが太陽光発電所や倉庫で組んでいる構成は、畜舎にもそのまま使えます。考え方を畜舎にあてはめると、こうなります。

光と音で、下見の段階で追い返す

当社の実感として、犯行の抑止にいちばん効くのは光と音です。太陽光発電所では、下見に来た窃盗団に対してセンサーが反応し、パトランプの「警察に通報します」という音声に気づいた近隣住民が警察に通報して、被害ゼロで終わった現場があります。
  • センサーライト:畜舎の出入口と、車をつけられる場所に向けます
  • パトランプ・音声:センサーと連動させます。音量は調節できるので、家畜を驚かせないよう、畜舎との距離や畜種に合わせて設定します

カメラは、出入口と車の両方を撮る

足利市の映像のように、カメラは犯人を記録します。大事なのは、人だけでなく、車が写るかどうかです。数百頭を運ぶには車が要ります。農場の入口と、畜舎に横付けできる場所の両方を押さえます。 カメラは、手の届かない高い位置に付けます。手の届く高さだと、下見の段階で外されたり、向きを変えられたりするからです。

離れた場所から見られるようにする

自宅と畜舎が離れている農家は多いと思います。回線を引けば、スマートフォンで畜舎の様子を見られます。太陽光発電所でも、よほどの田舎でない限り、光回線は新規で引けることがほとんどです。

カメラは、防犯のためだけのものではない

1台のカメラで、毎日の見守りと防犯。毎日の見守りでは分娩や体調の確認、作業の段取りができ、牛舎まで行く回数が減る。防犯では夜中に誰かが入ってきたら記録し、車も写す。分娩の見守りで1回あたり20時間12分の作業が減った(広島県の検証)

毎日の見守りのために付けたカメラが、夜は防犯の記録にもなります。

畜舎のカメラは、防犯だけのものではありません。むしろ、毎日の飼養管理のために付けたカメラが、そのまま防犯にもなると考えたほうが自然です。 以前、テレビのニュースで、畜舎の様子を遠隔のカメラで確認してから、その日の作業の予定を立てて畜舎に向かう農家の方を見たことがあります。段取りのために付けたカメラが、夜中に誰かが入ってきたときの記録にもなる。1つのカメラが、両方の役に立っていました。 広島県は、「防犯用監視カメラを利用した分娩監視作業省力化の検証」という取り組みをまとめています。和牛の繁殖農家(20頭規模、自宅から牛舎まで10km)で、防犯用の監視カメラを分娩監視に使ったところ、1回の分娩あたり平均20時間12分の作業が減りました。録画で、子牛が初乳を飲んでいる様子も確認できたそうです。 ほかの県にも、同じような例があります。
  • 千葉県(安房地域):母牛50頭規模の農家で、分娩監視カメラ2台と温度センサーを導入。分娩の発見が遅れることによる事故は「ほとんどなくなりました」
  • 新潟県:家庭用のネットワークカメラで分娩監視の仕組みを手づくりし、4か月・12頭の分娩で監視作業が89%減。牛舎内のトラブルもいち早く見つけられるようになった
夜中に牛舎まで見に行く回数が減り、同時に、夜中に誰かが入ってきたら分かる。1つの仕組みで、2つの役割を持たせられます。 当社では、防犯と分娩監視を兼ねたカメラの設置をご提案できます。 ただし、広島県の検証では死角があることも分かったと書かれています。分娩を見たい場所と、防犯で見たい場所(出入口・車の横付け場所)は違います。両方に使うなら、どこに何台付けるかを、最初から両方の目的で考える必要があります。

補償について

農林水産省の通知では、家畜共済や収入保険の一部で、適切な盗難防止策をとっていれば、盗難も補償の対象になることを周知するよう求めています。ご自身の契約で盗難がどう扱われるかは、加入先に確認してください。

ご相談はこちら

畜舎・牛舎・豚舎・鶏舎の防犯カメラ設置は、まずはご相談ください。現地を調査したうえで、お見積りをお出しします。防犯と分娩の見守りを両方やりたい、というご相談もお受けします。 あらかじめ金額を出していないのは、畜舎の配置と電源、配線の距離で費用が大きく変わるからです。「◯台でいくら」と先に出しておいて後から追加、ということにしたくありません。現地を見たうえで、根拠のある金額をお出しします。 なお、遠隔地の場合は現地調査費用をいただくことがあります。費用の目安は、交通費と人件費です。お問い合わせの際に所在地をお知らせいただければ、調査費用が発生するかどうかを先にお伝えします。 株式会社White&Green
東京都千代田区神田佐久間町3-37-1-203
TEL:03-5809-3116(営業時間 10:00〜18:00)
対応エリア:東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬 お問い合せフォームはこちら

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よくあるご質問

家畜の盗難は実際に起きていますか?

起きています。2020年には6月ごろから栃木県・群馬県などで子牛や豚の盗難が相次ぎ、7月上旬から8月28日までに栃木・群馬・茨城で豚約680頭、子牛8頭、鶏28羽が被害に遭ったと報じられました。前橋市の養豚場では一度に約400頭が盗まれています。

犯人はどのように盗んでいましたか?

群馬県畜産課と群馬県警察によると、犯行は夜間で、昼間に下見をし、畜舎の近くに車をつけて運び出していました。栃木県足利市では、男3人が子牛を逆さにして運び出し、ワゴン車で走り去る様子が防犯カメラに映っていました。

防犯カメラがあれば家畜の盗難は防げますか?

カメラだけでは防げないことがあります。足利市の牛舎では防犯カメラが犯行を撮影していましたが、子牛は盗まれました。カメラの役割は記録です。その場で追い返すには、センサーライトやパトランプなど、光と音を組み合わせることが必要です。

家畜の盗難は防疫にも関係しますか?

関係します。農林水産省は、家畜の盗難が家畜疾病の農場内への侵入とまん延につながるおそれがあると明記しています。飼養衛生管理基準でも、衛生管理区域に立ち入った人の記録や、関係のない人を立ち入らせないための看板の設置が求められています。

農林水産省はどんな対策を勧めていますか?

飼養頭数のこまめな確認、出入口・畜舎・飼料庫・機械倉庫の施錠、機材の整理整頓、ネットや柵の設置、「防犯カメラ作動中」などの看板、防犯カメラとセンサーライトの設置、不審者や被害の警察への通報、石灰散布などの消毒です。群馬県は、センサーライトと防犯カメラを多数設置することと、畜舎への車の横付けを防ぐことも挙げています。

畜舎の防犯カメラは分娩監視にも使えますか?

使えます。広島県の検証では、和牛の繁殖農家で防犯用の監視カメラを分娩監視に使い、1回の分娩あたり平均20時間12分の作業が減りました。ただし死角があることも分かっており、防犯と分娩監視の両方に使う場合は、最初から両方の目的でカメラの位置と台数を考える必要があります。

畜舎で警報音を鳴らすと、家畜が驚きませんか?

パトランプの音量は調節できます。畜舎との距離や畜種に合わせて、家畜を驚かせない音量に設定します。

家畜の盗難は保険や共済で補償されますか?

農林水産省の通知では、家畜共済や収入保険の一部で、適切な盗難防止策をとっていれば盗難も補償の対象になるとされています。ご自身の契約での扱いは、加入先に確認してください。

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