太陽光発電所のケーブルが盗まれた。朝、現場に着いて気づいた。
このあと何をすればいいのか。順番を整理します。
先に結論です。1番目は警察ではありません。安全の確認です。

盗難被害の直後にやることの順番。最優先は安全確認で、警察への通報はその次です。
0. まず、切れたケーブルに近づかない
これを最初に書くのには理由があります。
盗難のあとの発電所は、感電する可能性のある現場だからです。

※イメージです。盗まれたのは送電側のケーブルで、パネルは日が当たれば発電を続けています。切断面に電圧がかかっている可能性があります。
経済産業省は、破損した太陽電池発電設備についてこう注意喚起しています。
太陽電池パネルは光が当たれば発電をすることがありえます。
素手で触ると感電するおそれがあります。
ここが、ほかの盗難被害と決定的に違うところです。
発電所は、止められていません。盗まれたのは送電側のケーブルであって、パネルは太陽が出ていれば発電を続けています。切断されて地面に落ちている電線の端に、電圧がかかっている可能性があります。
しかも太陽光パネルが作るのは
直流です。直流は交流と違って、いったんアーク(放電)が出ると切れにくいという性質があります。家庭の電気のつもりで扱うと危険です。
盗みに来た人間が、感電で亡くなった例がある
株式会社White&Greenが警察から直接聞いた話です。
ケーブルを盗みに入った窃盗団の1人が、感電して真っ黒こげになって死んでいたことがあるそうです。残留電圧が原因だったと聞いています。
盗む側は、その発電所の構造を知りません。どこが生きているかも分かっていません。それで死んでいます。
ここから先は、オーナーの話です。
盗む側でさえ死ぬ現場に、翌朝、何も知らずに入っていくのがオーナーです。防護具もなく、普段の服装で。
そして、電圧がかかっている可能性があるのは1か所ではありません。
- 太陽電池パネル側(直流)。日が当たれば発電します。経済産業省も「太陽電池パネルは光が当たれば発電をすることがありえます」としています
- 系統側(交流)。電力会社側の線は、夜でも生きています
- パワーコンディショナ内部のコンデンサ(残留電圧)。メーカーの取扱説明書には、系統とパネルの両方から切り離したあとでも「内部コンデンサが完全に放電するまで、少なくとも10分間待ってください」と書かれています
「夜だからパネルは発電していない」も、「ブレーカーを切ったから大丈夫」も、安全の根拠になりません。どこが生きているかを判断できるのは電気の専門家だけです。
やること
- 切断されたケーブルの端部に手を触れない
- 濡れた地面に落ちているケーブルには特に近づかない
- どうしても触れる必要があるときは、経済産業省が示すとおりゴム手袋、ゴム長靴などの感電対策をする
- 関係者以外が入らないよう、ロープを張るなどして近づけない
発電所の敷地には、通りがかりの人や子どもが入ってくることがあります。フェンスに穴があいたまま放置すると、そこから入れてしまいます。
穴の応急処置は、盗難対策である前に安全対策です。
1. 警察に通報する。現場は動かさない
安全を確認したら、警察です。
被害届を出さないと、保険の請求ができません。保険会社は、警察に届け出ていることを前提にします。
そして、
現場をできるだけ動かさないでください。
- 切られたフェンスの穴
- 残された工具や手袋
- 車のわだち
- 足跡
これらは捜査の材料になります。片付けたい気持ちは分かりますが、警察が見るまでは触らないほうがいい。危険なケーブルの周囲だけロープを張って、あとはそのままにしておきます。
防犯カメラの映像がある場合は、保存してください。録画機は古い映像から自動で上書きします。放っておくと、数日から数週間で消えます。該当する時間帯を探してバックアップを取るか、業者に連絡して取り出してもらってください。
実際に
当社の得意先の発電所では、侵入の様子がカメラに記録されていました。深夜、黒ずくめの集団が匍匐前進で近づき、フェンスに約150cmの穴をあけて入ってきていました。こうした映像は、警察にとっても保険会社にとっても材料になります。
2. 施工業者か、電気主任技術者に連絡する
連絡先は、発電所の規模で変わります。経済産業省の示し方に沿うと、こうなります。
- 50kW未満:販売した業者、または施工した業者
- 50kW以上:選任している電気主任技術者
この連絡が早いほど、後が楽になります。理由は2つあります。
1つは
安全です。どこで切られているか、どこが活線かを判断できるのは電気の専門家です。
もう1つは
復旧工事の順番です。これが現実的にいちばん大きい。
3. 10kW以上なら、産業保安監督部への事故報告を確認する
ここは見落とされやすい部分です。
太陽光発電設備は、
10kW以上50kW未満のものも「小規模事業用電気工作物」として事故報告制度の対象になっています(低圧連系で、高圧受電設備と接続されていない場合)。
報告の期限は、経済産業省がこう定めています。
事故を覚知した(知った、気づいた)時から「24時間以内に事故の概要(速報)」について、「30日以内に事故の詳細(詳報)」について報告を行う必要があります。
報告先は、設置場所を所管する
産業保安監督部です。
ただし、ケーブル盗難がこの「事故」に当たるかどうかは、損壊の程度によります。株式会社White&Greenは電気保安の専門機関ではありませんので、ここは断定しません。
判断は、電気主任技術者か、所管の産業保安監督部に確認してください。期限が24時間と短いので、迷ったら早めに問い合わせるのが安全です。
なお、破損した太陽電池発電設備については、経済産業省が「被害の発生を知ってから24時間以内に、最寄りの産業保安監督部へ報告してください」としています(10kW以上の設備の所有者向け)。
4. 保険会社に連絡する
保険の約款は、事故を知ったら
遅滞なく通知することを求めているのが一般的です。具体的な期限や手続きは保険会社と契約によって違うので、
まず代理店に電話してください。
用意することになるのは、おおむね次のものです。
- 被害届の受理番号など、警察に届け出たことが分かるもの
- 被害状況の写真
- 防犯カメラの映像(あれば)
- 盗まれたケーブルの種類と長さ
- 復旧費用の見積書
ここでも、
記録が残っているかどうかで話が変わります。何もなければ、提出できるのは自分の申告と被害後の写真だけになります。
保険が現在どういう状況になっているかは、
太陽光の盗難、保険は何回目まで出るのかにまとめました。いま加入している契約では実際に支払われています。厳しくなるのは、更新と新規加入のときです。
5. 復旧工事の予約を、とにかく急ぐ
ここが、多くの人が想像していない部分です。
いま、復旧工事は順番待ちです。
株式会社White&Greenが現場で見ている範囲で言うと、
- 当社のお客様が被害に遭ったときは、復旧工事まで約2か月待ちました
- ある太陽光発電の設置会社は、盗難の復旧依頼が多すぎて手が回らず、自社の発電所が盗まれたまま半年動かせていないと言っていました
部材がないのではなく、工事をする人が足りていません。
そして、止まっているあいだ
売電収入はゼロです。ローンがあれば支払いだけが続きます。保険の売電補償は新規契約だと30日以内に限定されるので、2か月待てば1か月分以上が自己負担になります。
だから、
見積りや保険の話が固まるのを待たずに、まず工事の枠を押さえてください。順番は、連絡した順です。
6. 復旧と同時に、防犯対策を入れる
最後に、いちばん大事なところです。
一度やられた発電所は、また狙われます。
千葉県いすみ市では、8月に発覚した被害を9月に復旧し、その
1か月後にまた入られています。2回目はフェンスも切られていました。千葉県内の別の現場では4回、被害総額1億円です。
理由は単純です。犯人側から見れば、その発電所は
すでに下見が済んでいるからです。入り方も、車の停め方も、逃げ方も分かっています。そして復旧したということは、
新しい銅線が入ったということです。
一度盗難に遭った太陽光発電所は、また狙われるに詳しく書きましたが、復旧しただけで何もしなければ、同じことが繰り返されます。
復旧工事と防犯工事は、同じタイミングでやってください。別々にやると、現場に2回来ることになって費用も時間も無駄になります。そして、その隙間の期間が、いちばん危ない。
やることの順番(まとめ)
- 安全確認。切れたケーブルに触らない。ロープを張って人を近づけない
- 警察に通報、被害届。現場は動かさない。カメラ映像を保存する
- 施工業者か電気主任技術者に連絡(50kW未満は施工業者、50kW以上は主任技術者)
- 10kW以上なら、産業保安監督部への事故報告の要否を確認。速報は24時間以内
- 保険会社に連絡。遅滞なく
- 復旧工事の枠を押さえる。順番待ちになっている
- 復旧と同時に防犯対策。1か月後に再被害の例がある
では、何を付けるのか
株式会社White&Greenが太陽光発電所に設置しているのは、カメラだけではありません。
光と音です。
センサーが反応した瞬間に発電所を照らし、パトランプが「警察に通報します」という音声を爆音で流します。
匍匐前進で近づいてくる相手は、見られることを極端に嫌がります。その相手を、いきなり明るいところに引きずり出す仕組みです。
実際に、下見の段階でセンサーが反応し、パトランプの音に気づいた近隣住民が警察に通報して、被害ゼロで終わった現場があります。翌朝7時に、オーナーからお礼の電話が入りました。
機器の構成、配線の本数、カメラの向きまで図にして説明したのがこちらです。
太陽光発電所に、実際に何を付けているか。光と音とパトランプの組み立て方
県別の被害状況
- 茨城県:5年連続で全国ワースト。被害の6割以上が太陽光発電所
- 千葉県:令和6年は2,001件で全国2位。被害者の約7割が太陽光
- 栃木県:全国3位。買い取りを規制する条例がない
- 群馬県:1年で8倍の1,102件
- 埼玉県:埋設・鉄管保護でも3年で4回やられた市営発電所
- 神奈川県:県営発電所が2回。一晩で2,700m、被害3,000万円
全国の件数と県別の順位は、
太陽光の盗難件数ランキングにまとめています。太陽光発電施設からのケーブル窃盗は茨城・栃木・群馬・千葉の4県で約8割。令和7年に全国で24.1%減りましたが、中部管区は増えています。
出典
この記事で使った数字と引用の出どころです。いずれも公表資料で、どなたでも確認できます。
この記事の出典
※ ケーブル盗難が事故報告の対象になるかどうかは損壊の程度によります。株式会社White&Greenは電気保安の専門機関ではありません。判断は電気主任技術者または所管の産業保安監督部にご確認ください。
ご相談はこちら
太陽光発電所の防犯カメラ設置は、
まずはご相談ください。すでに被害に遭われた発電所の、復旧と同時の施工にも対応します。現地を調査したうえで、お見積りをお出しします。
あらかじめ金額を出していないのは、発電所は敷地の形と配線の距離で費用が大きく変わるからです。「◯台でいくら」と先に出しておいて後から追加、ということにしたくありません。現地を見たうえで、根拠のある金額をお出しします。
なお、
遠隔地の場合は現地調査費用をいただくことがあります。費用の目安は、交通費と人件費です。お問い合わせの際に発電所の所在地をお知らせいただければ、調査費用が発生するかどうかを先にお伝えします。
株式会社White&Green
東京都千代田区神田佐久間町3-37-1-203
TEL:03-5809-3116(営業時間 10:00〜18:00)
対応エリア:東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬
お問い合せフォームはこちら
よくあるご質問
太陽光発電所が盗難に遭ったら、まず何をすればよいですか?
最初にやるべきことは安全の確認です。警察への通報より前に、切断されたケーブルに触れないでください。経済産業省は破損した太陽電池発電設備について「太陽電池パネルは光が当たれば発電をすることがありえます」「素手で触ると感電するおそれがあります」と注意喚起しています。盗まれたのは送電側のケーブルであり、パネルは太陽が出ていれば発電を続けているため、切断された電線の端に電圧がかかっている可能性があります。関係者以外が近づかないよう、ロープを張るなどの措置をしてください。
切れたケーブルはなぜ危険なのですか?
太陽光パネルは光が当たれば発電するため、送電ケーブルを切られても発電自体は止まっていません。さらに太陽光パネルが作るのは直流で、直流は交流と違っていったんアークが発生すると切れにくい性質があります。どうしても触れる必要がある場合は、経済産業省が示すとおりゴム手袋やゴム長靴などの感電対策をしてください。また電圧がかかっている可能性がある場所は一か所ではありません。日中のパネル側(直流)、電力会社側の系統(交流で夜間も生きています)、そしてパワーコンディショナ内部のコンデンサに残る残留電圧です。メーカーの取扱説明書には、系統とパネルの両方から切り離したあとでも内部コンデンサが完全に放電するまで少なくとも10分間待つよう記載されています。ケーブルを盗みに入った窃盗団の一人が感電し、真っ黒こげになって死亡していた事例もあると、警察から聞いています。
警察に被害届を出す前に現場を片付けてもよいですか?
片付けないでください。切られたフェンスの穴、残された工具や手袋、車のわだち、足跡は捜査の材料になります。危険なケーブルの周囲だけロープを張り、警察が確認するまではそのままにしておいてください。また被害届を出さないと保険の請求ができません。
防犯カメラの映像はどうすればよいですか?
すぐに保存してください。録画機は古い映像から自動で上書きするため、放置すると数日から数週間で消えます。該当する時間帯を探してバックアップを取るか、設置業者に連絡して取り出してもらってください。映像は警察の捜査にも保険の請求にも使えます。
盗難の連絡先は誰になりますか?
発電所の規模で変わります。経済産業省の示し方では、50kW未満は販売した業者または施工した業者、50kW以上は選任している電気主任技術者に連絡します。どこで切られているか、どこが活線かを判断できるのは電気の専門家です。
太陽光発電設備の盗難は国への事故報告が必要ですか?
報告が必要になる場合があります。太陽光発電設備は10kW以上50kW未満のものも小規模事業用電気工作物として事故報告制度の対象です。経済産業省は「事故を覚知した時から24時間以内に事故の概要(速報)」「30日以内に事故の詳細(詳報)」の報告が必要としており、報告先は設置場所を所管する産業保安監督部です。ただしケーブル盗難がこの事故に当たるかは損壊の程度によるため、電気主任技術者または所管の産業保安監督部に確認してください。速報の期限が24時間と短いので、迷ったら早めに問い合わせてください。
復旧工事はどれくらい待ちますか?
現在は順番待ちになっています。株式会社White&Greenのお客様が被害に遭ったときは、復旧工事まで約2か月待ちました。ある太陽光発電の設置会社は、盗難の復旧依頼が多すぎて自社の発電所を半年動かせていないと話していました。部材がないのではなく工事をする人が足りていません。止まっているあいだ売電収入はゼロになるため、見積りや保険の話が固まるのを待たずに、まず工事の枠を押さえてください。
復旧したあと、また盗まれることはありますか?
あります。千葉県いすみ市では8月に発覚した被害を9月に復旧し、その1か月後にまた侵入されています。2回目はフェンスも切られていました。千葉県内の別の現場では4回、被害総額1億円です。犯人側から見れば、その発電所はすでに下見が済んでおり、復旧したということは新しい銅線が入ったということになります。復旧工事と防犯工事は同じタイミングで行ってください。